札幌の中学生がサッカーをするには、大きくわけて二つの選択肢があります。一つは、学校の部活動(※1)に入部すること。そしてもう一つは、学校が運営母体ではないクラブチーム(※2)に入団することです。
※1 中高一貫の私立学校の部活は、少し趣が違いますが、北海道ではとても少ないので(そのなかでも札幌大谷は道カブスに所属しています)ここでは公立中学校の部活を想定しています。
※2 クラブチームも、大きくわけるとJリーグチームの下部組織(J下部のチーム)と、民間が運営する「街クラブ」にわかれますが、今回は割愛します。
〈部活動とサッカークラブ 良いところ/懸念事項〉
※あくまでも個人の見解です。
■部活動の良いところ8選
1教育活動の一環として、学校生活とリンクさせながら成長を促せる。
2自主的活動として活動する中で、チームのリーダーとして、上級生としての自覚が芽生える。
3学校の代表として活動するので、学校全体から応援される。
4地域の仲間、幼なじみと同じチームで活動できる。
5サッカー経験に関係なく、サッカーをはじめられる。
6練習を学校で行える。
7テスト前(3~5日前)に諸活動停止期間がある。
8経済的な負担が比較的少ない。
■部活動の懸念材料7選
1素晴らしい指導力を持つ先生もいらっしゃる一方で、プレー経験や指導経験のない先生方もいらっしゃり、サッカーの指導ができる顧問の先生かどうかは巡りあわせによるところが大きい。
2練習開始の時間に教員がつけないことが多く、事前にトレーニング計画を立てる時間も保証されていない、あるいは、求めるべきではない?(サッカーの指導は先生方の「仕事」ではないので、トレーニングについて計画を立てたりすることは勤務時間外にボランティアで行う。)
3練習開始時に選手が揃わないことがある(委員会、行事の準備等)
4大人の目が届かない時間にトラブルが起きるリスクもある。
5平日練習は学校でできるものの、場所が狭く、(野球部や陸上部などと合同で使う)また、冬場には相当の体育館利用回数の制限がある。(平日一度も体育館が使えないことも珍しくない/休日も当たらない場合も)
6教員がつけないことが多い事情もあるからか、平日4日練習を入れる学校が多い。その結果、平日の拘束時間が長くなってしまう傾向がある。
7部活のルール上、土日どちらかしか活動できず、かつ活動時間は休日3時間以内と決められているので、1年生やベンチメンバーの試合経験を生み出すのに苦労する。
■クラブチームの良いところ8選
1プレー経験、指導経験をもった指導者がつき、専門的な指導が受けられる。
※事前にプランニングされた指導を効果的に行える指導者の場合、平日2~3回/一回75分~120分の時間でも十分なトレーニング効果を提供できる。
2選手の人数やレベルが揃っていることが多い。
3活動場所の環境が整えられていることが多い(固定の場所、芝、室内施設。特に冬季の練習場所)
4多くの学校から集まることが多いので、人間関係が広がる。
5学校行事や制約に左右されないことが多い。
6学年ごとに活動できるクラブの場合、各学年に十分な試合経験を積ませることができる。
7レベルの高い相手と対戦する環境を提供しやすい(リーグ戦、遠征など)
8サッカー関係者の人脈があり、クラブによっては上の年代の指導者から注目されやすい。
■クラブチームの懸念材料7選
1住んでいる場所と活動場所の距離によっては、移動に時間を要する。
2活動場所が日によって違うチームもある。
3かなり遅い時間に練習を行わざるを得ないチームもある。
4平日2~3回の活動の中で、指導者のレベルやトレーニングに参加する選手の人数が多すぎる場合などに十分なトレーニング効果を提供できないこともあり得る。
5学校の定期テスト前も、活動停止は基本的にはない。
6チーム内の競争のなかで、ついていくことが難しくなるリスクがある。
7経済的な負担は、部活に比べると高い。
〈メリットとデメリットは表裏一体〉
もちろん、「良いところ/懸念材料」は一概には言えません。
事情は各クラブによっても、各部活動によっても千差万別です。
また、懸念材料と考えられるものも、違う観点で見ればメリットにもなり得ます。
たとえば、部活動は先生がつけない時間が多いからこそ、子どもたちで自主的に練習を進行していく必要があります。そこから、サッカーの技術とは別の意味で「自主・自律」を学ぶかもしれません。
クラブは、「テスト前の活動停止」はありません。ですが、平日は2~3回のオフがあり、練習時間が始まる前にも時間はあります。その時間を有効に使い勉強することで「計画的に物事を進める」ことを学べるかもしれません。
「良いところ」として挙げた条件を最大限享受しつつも、その環境に甘えずに、「懸念事項」として挙げた条件を無効化するような工夫をしていくことが、とても大切なのだと思います。
〈部活?クラブ? サッカーの進路選択を進めるにあたって〉
貴重な子ども時代に、夢中になれるものに出会えたことはとても素晴らしいことです。
一人一人にとって、ベストな選択はみんな違うと思います。
・自分は部活動なのか、クラブなのか。
・どちらで中学3年間を過ごしていけば良い3年間を過ごせるのか
を、よく考えてチーム選びをすることが必要になります。
できるだけ、お住まいの地域の部活動や、クラブチームの活動について正確な情報を得たうえで、「どこでサッカーをやるか」を検討していくことをお勧めいたします。
そのためにも、試合の結果だけではなく、普段の練習や試合の雰囲気、所属選手に知り合いがいればその情報…等、いろいろな面から情報収集できたらいいですね。また、「良いところ」「懸念事項」はそれぞれで必ずあると思われるので、一度並べてみるといいかなと思います。
また、3年間のなかで、クラブの良いところ、部活の良いところを享受したいタイミングが変わってくることがあります。
例1:所属チームではレベルが物足りなくなってしまった…。
例2:そのクラブのレベルに合わなくなってしまった…。
例3:進学のために勉強の時間をもっと確保したい…。
例4:指導者と合わない…。
その際に、また「チーム選択」の必要に迫られることもあります。
最初に選んだ選択が全て正しいとは限りません。
その時々の状況に応じ、その時に適したサッカーの環境で、思い切り好きなことに打ち込める3年間を過ごしてほしいです。
〈まとめ…クラブと部活の新しいかたち…〉
現在、我々のようなサッカークラブの指導者のなかにも、部活出身の指導者は多くいます。多くの子どもたちに、スポーツに触れる機会、楽しめる機会を生み出してきた部活動の意義は、とても大きいものだと思います。
その部活動のあり方も、働き方改革の流れのなかで、大きく変わろうとしています。
昨今の報道により、部活動が完全なボランティアであり、中学校の先生方にとって最も負担感を感じる業務の一つであることを知りました。おそらく、部活動が「先生方の業務ではない」とご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
学生当時は、「もっとグラウンドに来てほしい」「もっと熱心に指導してほしい」と思うこともありました。ですが、今振り返ってみると、残務を後回しにしながら、何とか時間を生み出してグラウンドに来てくれていたんだなと思います。感謝とともに、とても大変だっただろうなと推察します。
これからは、クラブ・部活がそれぞれの良いところを出し合い、連携しながら、地域でサッカー・教育を考えていくことも、大切だと思います。
それが、多くの子どもたちが、より良いサッカー環境を享受できる環境につながっていくはずです。
子どもたちが、一人一人に合った活動の中で、より充実した生活を送っていけるよう、地域の部活動や他クラブとも連携して、よりよい活動を創出していけたらと思っています。
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